人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

わるしゃわ時間 mon carnet de tous les jours

ydonnadieu.exblog.jp

カモミール蒸し

カモミール蒸し_e0204985_21542851.jpg

ヨモギ蒸しならぬカモミール蒸し。温泉の街ブダペストにて感動したスチームバスです。

場所はゲッレールト温泉。ブダペスト一、市民と旅行者達に人気があるとか。日本人にはぬくすぎる36度と38度の温泉に浸っているとかなり歯痒くもありますが、この街の温泉文化の礎を築いたトルコ人の文化遺産ともいえるスチームバス(ハマム)では、一歩内部に入るや熱風のような蒸気の中に清涼感を感じます。よーく見ると、壁際の蒸気の吹き出し口にある木製簀子の上にたっぷり蒸気を含んだ乾燥ハーブの固まりを発見。一瞬ヨモギかな?とも思ったのですが、おそらく、こちらでハーブティーとして愛飲されているカモミールではないかと思います。ひょっとしたら、薄荷も少し混ぜているかもしれません。

街に鉱泉が幾つも湧き出るというブダペストの街では、もともと裸の風呂文化があったかもしれませんが、ワタクシが通った三日間というもの、すっぽんぽんの方を見かけたことは、混浴スペースはもちろん、女湯でもありませんでした。唯一の例外は閉館前の夕刻に、地元のおばあちゃんが自宅でシャワーを浴びるがごとく、シャワーキャップを被り、ボディシャンプーをブクブク泡立て堂々とした巨体を洗っていたのを目撃しただけ。宿泊ホテルと同じ建物内に温泉施設があるので、最終日の早朝六時半に出かけたときも、来ていたのは地元の女性達がほとんどのようでしたが、皆様水着を着用していました。

地元人にとって公衆浴場とはリラクゼーションの場という認識が強いのか、あるいは、衛生観念に多少のずれがあるといったらよいか、はたまた天然鉱水を損なわないようにという配慮によるのか、施設のゆるい衛生管理に個人的に少々不安を感じるのですが、このように乾燥ハーブを使い、スチームバスをたてる知恵は、さすがの一言。長い歴史ある街ならではで大変感心しました。

たった三日間でしたが、自分なりに作法も確立し、38度の温泉に十分間浸った後に、スチームバスを五分間。あるご婦人がしていたのを真似て、スチームバスに入ると、まず、カモミールをひとつまみ。細かく砕かれたカモミールはお灸で使う荒めのモグサのようで、それを両手平にさっと広げ、首や両腕、脚にこすり、軽くマッサージします。その後、バスを出る前に鼻孔からハーブの香りたっぷりの蒸気を吸い込み、口から息を吐き出すこと計10回。ヨガのようにゆっくり行うとすっきりします♡これを大体約一時間の入浴中に3〜4セット。当初不満であったぬくい湯も、水中に四肢を解き放てば、スチームバスで瞬間的にショックを受けた身体をほぐすにはなかなかでありました。

さて、このカモミール蒸しの感動を男湯にいた夫君に話すと、男湯にはカモミール、なかったらしいです・・・?!カモミールの代わりに、パートナーを物色する同性愛の方がいたとか。これもブダペストの一部の温泉名物のようで、夫君よ、何はともあれ、無事に帰還できてなによりでした。

カモミール蒸し_e0204985_2155020.jpg

二十世紀初めに建てられた建物には、別経営ですがホテルと温泉施設が入っています。内部は色鮮やかなステンドグラス、モザイク、大理石をふんだんに使い、トルコ、古代ローマ、当時流行のアールヌーヴォーをミックスしたブダペストならではの独特の装飾様式を生み出し、異国情緒に溢れています。

カモミール蒸し_e0204985_21552389.jpg

特に女湯では、皆水着姿とはいえ、思い思いに湯に浸り、うっすら顔を上気させながら、仲間でおしゃべりに興じたり、身を横たえている様は、19世紀のフランス新古典の画家、アングルが描いた世界のよう。この街が欧州の一角ながらも遠い昔にトルコに一世紀半も支配され、東洋にきわめて近い都であったことを強く感じさせます。


ホテルのほうは、残念なことに建設当初の優雅な佇まいはかなり薄れ、各階を結ぶ階段を飾るステンドガラスやエントランスの重厚感も今となっては古くさく感じられるだけ。とはいえ、部屋のテラスからはドナウ川に架かる自由橋を眺められ、路面電車やバス、乗用車がけたたましくひっきりなしに往来するのを見ながら、夫君は夜更けに巻き煙草に火をともしていました。普段は滅多に吸わない人ですが、気分がいいと吸いたくなるらしい。そんな気持ちもよくわかる眺めです。
カモミール蒸し_e0204985_21581875.jpg

よくも悪くも古ーいホテルは、温泉施設を楽しむにはこの上なく便利です。宿泊者だと、水着を来て、バスローブを羽織り、ビーチサンダルをつっかければ、そのまま直結する温泉施設へ行けます。お会計はホテルの部屋へつけてもらうので、お財布も必要なし。海水浴や日帰り温泉では、化粧品や着替えや貴重品など手荷物の多さに行く前からウンザリしてしまうワタクシにはとってもありがたいシステムです。
by ydonnadieu | 2012-08-20 22:03 | voyage 旅
<< トカイワイン、王者の美酒 葡萄酒水 Fröccs >>