何年か前に年末年始を過ごしたアムステルダムのホテルでは、至る所にチューリップの花が2、30本もたっぷりと花瓶に生けられていて、それまでどこの花屋にもある平凡な花とばかり思っていたのが、思いのほか壮観な眺めとなっていました。そして、直立不動でまっすぐのびる花の姿にオランダの人々が新たに迎える一年を寿ぐ気持ちを見た思いがしましたが・・・
よくよく振り返ってみると、ホテルのレセプションやホールや食堂などパブリックスペースを飾っていたチューリップをことのほか清々しく感じたのは、どの花も堅い蕾がようやく開きかかったところで、花の色も、葉の緑もこの上なく瑞々しかったから。普通、暖房の効いた室内だと、時間と共にチューリップの花は緩むように開き、葉の緑は色が抜けたように薄くなり、茎は一つ一つが思い思いに曲がりくねるところ、おそらく、ホテルでは二、三日毎に花を生け替えていたらしいのです。チューリップの一大生産国なので、街を歩いていても、花の種類は色といい豊富で、しかもパリよりも若干安い値段のようでしたが、それでも、まだまだ命のあるチューリップの花を短期間で生け替えてしまうとは、いやはや、なんとも贅沢なことです。
先週から我が家で生けているチューリップも、もちろん当初はアムステルダムで見た花のイメージがありましたが、生けてから三日目には総ての花が好き勝手に乱れに乱れ、とうとう収拾がつかなくなりました。とはいえ、早々に新しい花と選手交代にするなんて可哀想なこと、出来ません。しかも、月末までこんなことを三日おきに繰り返す財布の余裕もなし。
今日で一週間を過ぎるチューリップはキッチンの窓辺に場所を移し、相変わらず自由気儘に花咲いてます。開花したばかりのチューリップを愛でるオランダ風の贅沢は諦め、今週からは真っ赤なアマリリスを生けることにしました。
我が家では普段はまず選ばれることの決してない、非日常的な深紅の花。
秋からサロンのコーヒーテーブルを飾る林檎とともに、今年の暮れは図らずも赤がインテリアのポイントになっております。